神道で「穢れ(けがれ)」とは「氣枯れ」——生命力の氣が枯れた状態を指すとも言われます。お祓いは、枯れた氣を祓い清め、本来の澄んだ状態に戻すための作法。神社に行かなくても、自宅でできる基本の祓いを、塩・言葉(祓詞)・所作(九字)の三つの側面から図解します。
塩は古来「腐敗を防ぎ、清浄を保つもの」として、祓いの筆頭に用いられてきました。相撲の土俵の塩まき、葬儀後の清め塩、料理屋の盛り塩——すべて同じ思想です。
小皿に粗塩を山形に盛り、玄関の内側(気の入り口)に。家相で気になる場合は鬼門(北東)・裏鬼門(南西)にも。週に一度(最低でも月に一・二度)新しい塩に取り替え、古い塩は「ありがとうございました」と心で唱えて処分します。
湯船にひとつかみの粗塩を入れて入浴します。「今日一日の氣枯れを流す」と念じながら、ゆっくり浸かりましょう。疲れが強い日、人混みに出た日、嫌なことがあった日に。
外出先から戻ったとき、肩越しに左・右・左と少量の塩をふりかけて祓う略式。気になる場所に入る前のお守り代わりにも使えます。
精製塩よりも、海水から作られた粗塩(あらじお)が良いとされます。祓いに使った塩は食用にせず、感謝して水に流すか、白紙に包んで処分します。
神社で神職が奏上する「大祓詞(おおはらえのことば)」の心を、短い言葉に込めたのが略祓詞です。朝、手を洗い口をすすいでから、姿勢を正して二拝し、ゆっくり唱えます。
唱えたあとは二拝二拍手一拝。声に出すのが基本ですが、出せない場所では心の中で唱えても構いません。守護真言とあわせて朝の習慣にすると、一日の氣が整います。
もとは道教の護身呪文で、日本では修験道・陰陽道に取り入れられました。右手を刀に見立てた「刀印(とういん)」で、横五線・縦四線の格子を空中に切ります。ボタンを押して、切る順番と唱える字を練習しましょう。
旅立ちの朝や、気持ちを引き締めたいとき、禹歩・反閇のあとの結びとして行うのが伝統的な組み合わせです。
「一二三四五六七八九十 布瑠部 由良由良止 布瑠部(ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり ふるべ ゆらゆらと ふるべ)」。石上神宮に伝わる鎮魂の言葉で、生命力を揺り起こし蘇らせるとされます。朝、鏡の前で十回、ゆったりと唱えます。
「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」は漢代の公文書の結句に由来する陰陽道の常用呪文。「律令の如く速やかに成せ」の意で、祓いや祈願の最後に三度唱えて結びとします。晴明神社の護符にも記される、お札・お守りの本家・陰陽道の基本語です。
宮中では毎月末に「晦の祓」が行われていました。現代版として、毎月末日に①家中の換気と水回りの掃除、②盛り塩の交換、③塩湯入浴、④略祓詞の奏上、を一組で行うと、月の氣枯れを持ち越しません。開運手帳に記録して習慣化しましょう。
六月末の「夏越(なごし)の祓」は茅の輪くぐりで半年の穢れを祓う行事。神社の茅の輪は「左まわり・右まわり・左まわり」の八の字で三度くぐるのが作法です。十二月末の年越の祓とあわせ、年に二度の大祓は必ず神社で受けるのがおすすめです。
お祓いは、他者を害するためではなく、自分と住まいの氣を整えるための伝統的な作法です。効果を保証するものではありません。心身の不調が続く場合は医療機関へ。また火や刃物は使わず、ここで紹介した安全な方法の範囲でお楽しみください。